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帰り道

終電に飛び乗ってドアの横の非常席が空いていたのでそこに腰を下ろした。まただめだったな、もうこれ以上この個体を維持するのは難しいななんていつもと同じことを考えているうちに眠ってしまっていて気がついたら茨木駅で停車していた。運転見合わせのアナウンスが流れ、開きっ放しのドアから冷たい雨が入り込んで右足を濡らしていた。ホームに出て時計を確認すると12時30分だった。
 運転席に運転手さんがいたので帰りたい駅名を告げた。その路線に連絡する駅までは行くので必ずこの電車に乗っていて下さいとのこと。又、その駅からどのような対応になるかは降りた駅の駅員に聞いて下さいとのことだった。急ぐ理由もないので従う。僅か数キロ先の直線上で起きた悲劇とその覚悟を羨ましいと思う気持ちをできるだけ見ないようして、突然現れた非日常にもたれかかった。12時50分、電車が動き始めた。

 窓の外ではきんぎょ注意報のギョピちゃんの群れが、捕食者である巨大な醤油差しを先に見つけてビルの影に身を隠した。都会の暗くなることができない夜を醤油差しが醤油で覆う時間。内容量の半分を使い、街をすっぽりと覆い尽くした。その膜の外で色を取り戻した夜空をプラスチック製の衣装ケースが明日の開店に間に合うようにコーナン各店舗に向かう。

 1時50分、鶴橋に着いた。本来であればここから近鉄線に乗り換えるのだがその電車はもう無い。駅員さんにどうしたら良いか聞く。乗り合いのタクシーを用意して下さるとのこと、タクシー会社も今夜は混み合っていて、呼ばれるまで待機するようにとのこと。
 大人しく足元の覚束ない酔っ払いがすれ違う人々に小鮎を渡すの見ながら待つ。いらない人が捨てた小鮎が歩道で跳ねる。
 20分程で車が到着し、乗り合いは3人、それぞれの最寄り駅へと向かう。私よりも一回りは若く見える運転手さんもこういったことは初めてのようで「あまりそちらの方角には行かないのでカーナビを使わせて頂きます、駅名を教えて下さい」と言っていた。料金は国鉄が持って下さる旨も説明して下さった。雨で薄まった醤油の中を行く。一人降り、二人降り、順番が回ってきた。駅の手前のコンビニで降ろしてもらい礼を言って別れる。冷凍のパスタを購入し帰宅する。荷物を投げ出し、パスタをレンジで温め無心で食べる。時間は2時50分。14時間ぶりの食事が胃にしみた。
 歯磨き、洗顔を済まし布…